PT PMAと駐在員事務所の違いは?
PT PMAは外国資本が入る商業法人で、契約、請求、雇用、売上計上が可能です。駐在員事務所は原則として市場調査や連絡業務に限定され、直接売上を上げることはできません。
法人設立
日本企業がインドネシアでPT PMAを設立する前に確認すべきKBLI、外資規制、OSS/NIB、最低払込資本、投資計画、設立手続き、費用、よくある失敗を整理。
インドネシアで外国資本が入る商業活動を行う場合、多くの日本企業はPT PMA(Perseroan Terbatas Penanaman Modal Asing)の設立を検討することになります。PT PMAは、外国企業や外国人が直接出資し、インドネシア国内で売上を上げるための基本的な法人形態です。一方で、PT PMAは「会社を登記すれば終わり」という制度ではありません。2026年時点では、KBLI、外資規制、OSS-RBA、NIB、最低払込資本、総投資計画、取締役・コミサリス構成、LKPM報告、銀行口座、税務、ビザまでを一体で設計する必要があります。この記事では、日本企業の経営者・法務部・海外事業部が初期検討で押さえるべき論点を、実務目線で整理します。
PT PMAは、外国資本が入るインドネシアの有限責任会社です。日本企業がインドネシアで現地法人を設立し、販売、サービス提供、輸入、製造、コンサルティング、現地採用などの商業活動を行う場合、通常はPT PMAの設立を検討します。外国企業が直接株主となることができ、契約主体となり、売上を計上し、現地で従業員を雇用できる点が特徴です。
これに対し、駐在員事務所は市場調査、プロモーション、本社との連絡、情報収集などに役割が限定され、原則としてインドネシア国内で直接売上を上げることはできません。したがって、インドネシアで実際に販売やサービス提供を行う計画がある場合、駐在員事務所ではなくPT PMAが必要になるケースが多くなります。
日本企業が最初に判断すべきなのは、「市場調査段階なのか」「現地で収益を上げる段階なのか」です。商談や調査だけであれば別の選択肢もありますが、契約締結、請求、現地採用、輸入、ライセンス取得、在庫保有などを伴う場合は、PT PMAを前提にスキームを整理する必要があります。
インドネシアの外国投資制度は、Omnibus Law(雇用創出法)以降、OSS-RBA(Online Single Submission – Risk-Based Approach)を中心に大きく整理されています。企業設立そのものは公証人と法務人権省のAHUシステムを通じて行われ、事業許認可はOSS-RBA上でKBLIごとに管理されます。
2026年の実務で特に重要なのは、会社法上の法人設立、BKPMの投資規制、OSS上のリスク区分、税務登録、ビザ・就労許可が別々の論点でありながら、最終的には一つの事業計画として整合していなければならない点です。会社は設立できても、OSS上の許認可が揃わなければ営業できない場合があります。また、会社は設立できても、外国人役員や駐在員の滞在資格が取れなければ現地運営が止まります。
制度や運用は改正されることがあるため、申請時にはBKPM、OSS、移民局、税務当局、関連省庁の最新運用確認が必要です。本記事は日本企業が検討すべき基本構造を整理するものであり、個別案件ではKBLI、所在地、事業内容、株主構成ごとの確認が前提になります。
PT PMAの資本要件で最も誤解されやすいのが、「最低払込資本」と「総投資計画」の違いです。2025年のBKPM規則改正により、標準的なPT PMAの最低払込資本は従来の10十億ルピアから2.5十億ルピアへ引き下げられたと整理されています。これは、設立時に株主が会社に払い込む実際の資本金に関する要件です。
一方で、総投資計画の基準は別に存在します。PT PMAは原則として中規模以上の投資主体として扱われるため、土地・建物を除いた投資計画が10十億ルピア超となるよう設計する必要があります。総投資計画には、設備、車両、ライセンス、内装、運転資金、事業準備費などが含まれ得ますが、土地・建物の取得費は原則として含められません。ただし、不動産、農業、水産養殖など一部の事業では扱いが異なる場合があります。
さらに重要なのは、総投資計画が5桁KBLIごと、かつプロジェクト所在地ごとに見られる点です。例えば、ソフトウェア開発と経営コンサルティングを別KBLIで登録する場合、単純に一つの10十億ルピア計画で足りるとは限りません。日本本社の社内稟議では、「設立時に必要な払込資本」と「事業計画上コミットする投資総額」を分けて説明することが重要です。
また、最低払込資本を形式的に用意すれば十分というわけではありません。銀行口座開設後の資金送金、12カ月程度の資本維持、実際の運営費への使用、LKPM報告での投資実現額との整合性など、設立後の資金管理も見られます。設立だけでなく、初年度の資金繰りまで設計しておくべきです。
KBLIは、インドネシアにおける事業活動の分類コードです。PT PMAの定款、OSS/NIB、許認可、外資規制、投資計画は、このKBLIに強く紐づきます。日本の定款目的のように広めに書いて将来の事業拡張に備える、という感覚でKBLIを選ぶと、後から実務上の問題が起きやすくなります。
KBLIごとに、外資100%が可能か、国内資本との合弁が必要か、特定条件があるか、または外国投資に閉じられているかを確認します。現在はPositive Investment Listの考え方により、多くの分野は原則開放されていますが、すべての業種が自由という意味ではありません。新聞・雑誌、国内輸送、伝統工芸、伝統化粧品、特定の原材料加工など、外資比率や参入条件が残る分野もあります。
また、一見同じ事業に見えても、販売代理、輸入、卸売、小売、製造、ソフトウェア開発、SaaS提供、コンサルティング、教育、医療関連では、選ぶべきKBLIが異なります。請求書の内容、税務申告、OSS登録、実際の事業活動が一致していないと、後日ライセンスや税務上の不整合が生じます。
日本企業が特に注意すべきなのは、将来やりたい事業をすべて入れようとしてKBLIを増やしすぎることです。KBLIを増やすと、投資計画の総額、OSS上のリスク区分、必要許認可、LKPM報告の複雑さが増える可能性があります。初期段階では、実際に行う事業と近い将来必要になる事業を分けて整理し、過不足のないKBLI構成を設計することが重要です。
PT PMAは、法務人権省で法人格を取得した後、OSS-RBA上で事業許認可を取得します。OSSで発行されるNIBは、会社の基本的な事業者番号であり、ビジネスライセンス、輸入者番号、税関アクセスの基礎にもなります。ただし、NIBが出たからといって、すべての事業を直ちに開始できるとは限りません。
OSS-RBAでは、KBLIごとに低リスク、中低リスク、中高リスク、高リスクといった区分が設定されます。低リスクの場合はNIBが基本的な事業許可として機能することがあります。中低リスクでは標準証明が自己申告型で付与されることがあり、中高リスクでは標準証明の検証が必要になる場合があります。高リスク事業では、NIBは準備のための入口に過ぎず、実際の営業開始には技術省庁や関係当局の実質的な許可が必要になります。
食品、医薬品、化粧品、サプリメント、教育、金融、建設、エネルギー、物流、医療、環境負荷のある製造業などは、NIB以外の追加許認可が論点になりやすい分野です。設立前に「この事業はNIBだけで営業できるのか」「標準証明の検証が必要か」「別省庁の許可が必要か」を確認しておく必要があります。
日本企業の実務では、法人設立のスケジュールだけでなく、営業開始可能日を基準に全体工程を引くべきです。会社設立が2週間で終わっても、銀行KYC、資本金送金、税務登録、追加ライセンス、ビザ、BPJS登録が残っていれば、実質的な営業開始はさらに先になります。
PT PMAでは、最低2名または2社の株主が必要です。外国法人2社、外国法人と外国個人、外国法人とインドネシア法人など、株主構成はKBLIの外資制限と投資目的に応じて設計します。単独株主の外国投資会社は原則として想定されないため、日本本社100%子会社にしたい場合でも、グループ会社や関連法人を含めた株主構成を検討する必要があります。
取締役(Director)は会社の日常業務を執行し、契約、銀行、許認可、税務、雇用などで会社を代表します。外国人が取締役になることは可能ですが、現地で実際に業務を行う場合は、適切なKITAS、就労許可、個人NPWPなどの確認が必要です。名義だけ外国人役員を置けばよいという単純な話ではありません。
コミサリス(Commissioner)は、取締役を監督し、株主の意向に沿って会社運営を監視する役割を持ちます。通常、日常業務を執行する立場ではありません。外国人がコミサリスになることも可能ですが、報酬、現地滞在、実質的な活動内容によってはビザや税務の論点が出る場合があります。
日本本社が特に確認すべきなのは、誰が銀行署名者になるのか、誰がOSSや税務の責任者になるのか、現地での意思決定権限をどこまで委譲するのかです。ガバナンス設計を曖昧にしたまま設立すると、設立後の銀行口座開設、契約締結、税務申告、ビザ申請で止まりやすくなります。
最初のステップは、事業内容の整理です。日本側で予定している事業をインドネシアのKBLIに落とし込み、Positive Investment Listで外資比率と条件を確認します。同時に、OSS上のリスク区分、必要ライセンス、事業所在地、投資計画、役員構成、資本金、ビザ方針を整理します。ここを急ぐと、後からKBLI追加や定款変更が必要になり、余計な時間とコストがかかります。
次に、会社名をAHUシステムで確認します。PT PMAの会社名は、原則として3語以上で構成され、既存会社と紛らわしい名称や一定の制限に抵触する名称は使えません。日本本社のブランド名をそのまま使えない場合もあるため、複数の候補を用意しておくとスムーズです。
会社名が確保できた後、公証人の前で設立証書(Akta Pendirian)を作成し、定款、株主、資本構成、KBLI、取締役、コミサリス、所在地を記載します。日本本社の登記簿謄本、定款、取締役会決議、委任状などは、アポスティーユとインドネシア語の宣誓翻訳が必要になる場合があります。
公証人が法務人権省に申請し、承認書(SK Kemenkumham)が発行されると、会社は法人格を取得します。その後、NPWP、税務登録、OSSアカウント、NIB、必要な標準証明・許認可、銀行口座、資本金送金、BPJS登録、ビザ申請へ進みます。設立証書の作成よりも、銀行KYCやビザ・許認可の方に時間がかかるケースもあります。
日本法人がPT PMAの株主になる場合、一般的に登記簿謄本、定款、取締役会決議または株主決議、署名者の権限を示す書類、委任状、代表者・役員のパスポート、住所確認書類、税番号関連情報などが求められます。書類の種類は株主構成や手続きルートによって変わるため、早い段階で確認する必要があります。
日本とインドネシアはいずれもアポスティーユ制度の対象国であるため、従来の大使館認証に比べて文書認証の実務は効率化されています。ただし、日本側での公証、アポスティーユ取得、インドネシアでの宣誓翻訳、公証人・銀行・税務当局向けの形式確認には時間がかかります。
外国人役員や個人株主がいる場合、パスポートの有効期限、住所証明、写真、個人税番号、KITAS申請予定の有無も確認します。特にKITASを予定している場合は、パスポート残存期間や役職、株式保有額、雇用・役員報酬の整理が必要になります。
標準的なサービス業やコンサルティング業のPT PMAで、低リスクまたは比較的シンプルなKBLIの場合、日本側の書類準備開始から初回請求が可能になるまで、実務上は6〜10週間程度を見込むことが多いです。高リスク事業、製造業、食品・化粧品、建設、医療、金融、物流など追加許認可が必要な分野では、8〜12週間以上、場合によってはさらに長くかかります。
主な工程は、事前設計、書類準備、アポスティーユ・翻訳、会社名確認、公証人による設立証書作成、法務人権省承認、税務登録、OSS/NIB、銀行口座開設、資本金送金、BPJS、ビザ・就労許可、追加許認可です。OSSやAHUの処理自体は早くても、銀行KYCや日本側の社内決裁、書類認証で時間がかかることがあります。
費用は、専門家報酬、公証人費用、政府手数料、翻訳、アポスティーユ、バーチャルオフィスまたは物理オフィス、税務・会計顧問、KITAS、追加ライセンスの有無によって変わります。最低払込資本2.5十億ルピアは費用ではなく会社への資本拠出ですが、キャッシュフロー上は最も大きな資金準備項目です。設立費用だけでなく、初年度の会計・税務・LKPM・ビザ更新まで含めて予算化することを推奨します。
PT PMAは設立後も継続的な報告義務があります。特にBKPMへのLKPM(投資活動報告)は、投資計画に対する実現状況を報告する重要な義務です。報告漏れが続くと、警告やライセンス上の問題につながる可能性があります。設立直後から、誰が、いつ、どの数値をもとに報告するのかを決めておく必要があります。
税務面では、法人税、VAT、源泉税、給与税、取引先への支払い、移転価格、配当源泉税、税務申告期限を管理します。日本本社との役務提供契約、ロイヤルティ、貸付、配当、出向者給与がある場合は、インドネシア税務と日本側の税務の両方を確認する必要があります。
銀行口座開設では、株主情報、実質的支配者、取締役、事業内容、取引予定、資金源に関するKYCが行われます。書類が揃っていても、銀行の内部審査で時間がかかることがあります。ビザについては、Investor KITAS、Working KITAS、Director/Commissioner ITASのどれが適切かを、株式保有額、役職、実際の活動内容に基づいて判断する必要があります。
第一に、最低払込資本2.5十億ルピアとInvestor KITASの要件を混同しないことです。会社設立上の最低払込資本が下がったとしても、外国人個人がInvestor KITASを取得するための株式保有額や移民局側の要件が同じように下がるとは限りません。役員を誰にするか、どのビザで滞在するかは、会社設立とは別に確認する必要があります。
第二に、ノミニー構造を使わないことです。外資制限がある分野で、インドネシア人に名義だけ株式を持ってもらい、裏契約で実質支配を確保する方法は大きなリスクがあります。インドネシアでは、外資規制を回避するためのノミニー構造は無効と扱われるリスクが高く、日本企業にとって株式を失うリスクにもつながります。
第三に、日本の定款の感覚でKBLIを広く入れすぎないことです。KBLIを増やすと、投資計画、リスク区分、ライセンス、LKPM報告、税務上の整合性が複雑になります。将来のために何でも入れるのではなく、初期事業と将来事業を分けて設計する方が安全です。
第四に、株主ローンで簡単に資金を入れればよいと考えないことです。インドネシアには過少資本税制や負債資本比率の考え方があり、親子ローンの利息が税務上損金算入できない可能性があります。資本金、株主ローン、配当、源泉税、租税条約、DGT Formの提出まで含めて、資金還流設計を行う必要があります。
IJB Consultingでは、PT PMA設立を単なる登記手続きとしてではなく、インドネシアで事業を動かすための実務設計として支援します。具体的には、事業内容の整理、KBLI選定、Positive Investment Listの確認、OSS-RBA上のリスク区分確認、資本・投資計画、株主・役員構成、必要書類、設立スケジュールを日本語で整理します。
また、現地公証人、会計・税務、ビザ、銀行、翻訳、ライセンス実務の専門パートナーと連携し、設立証書、法務人権省承認、NPWP、OSS/NIB、銀行口座、資本金送金、BPJS、KITAS、LKPM体制まで、設立後の運用を見据えた支援を行います。
日本本社向けには、社内稟議や投資判断に使いやすい形で、必要投資額、初期費用、リスク、未確認事項、次のアクションを整理します。制度は変更されることがあるため、実際の申請前には最新の法令・当局運用・個別KBLIの確認を前提に進めます。
実際のご相談でも多い質問を整理しています。
PT PMAは外国資本が入る商業法人で、契約、請求、雇用、売上計上が可能です。駐在員事務所は原則として市場調査や連絡業務に限定され、直接売上を上げることはできません。
2026年時点の実務では、標準的なPT PMAの最低払込資本は2.5十億ルピアと整理されています。ただし、総投資計画は原則10十億ルピア超が必要であり、業種や所在地により追加要件があります。
必ずしもそうではありません。会社設立上の払込資本要件と、移民局側のInvestor KITAS要件は別です。株式保有額、役職、活動内容を個別に確認する必要があります。
多ければよいわけではありません。KBLIごとに外資規制、投資計画、リスク区分、許認可、LKPM報告が関わるため、実際の事業と近い将来必要な事業に絞って設計することが重要です。
シンプルな低リスク事業であれば、書類準備から営業準備まで6〜10週間程度を見込むことが多いです。高リスク事業や追加許認可がある場合は8〜12週間以上かかることがあります。
一般的には、登記簿謄本、定款、取締役会決議または株主決議、委任状、署名者・役員のパスポート、住所確認書類などが必要です。アポスティーユと宣誓翻訳が必要になる場合があります。
推奨できません。外資規制を回避するためのノミニー構造は重大な法的リスクがあり、裏契約が無効と扱われる可能性があります。
可能です。ただしIJB Consultingでは、KBLI、OSS/NIB、資本設計、ビザ、税務、銀行、設立後のLKPMまで見据えた設計を推奨しています。